「部屋に物が少ない人って、どんな性格や心理をしているんだろう?」と気になったことはありませんか。
ミニマリストという言葉を耳にする機会も増え、すっきりとした部屋で暮らす人の考え方に関心を持つ方もいるでしょう。一方で、物が多いことや片付けが苦手なことに悩んだり、家族との価値観の違いに戸惑ったりすることもありますよね。
ただし、部屋にある物の量だけで、その人の性格や心理状態を判断することはできません。持ち物の量は、好みのほか、住居の広さ、家族構成、仕事、経済状況、生活に必要な備えなどにも左右されます。
この記事では、物を少なくして暮らす理由として考えられることや、持ち物を管理しやすくする工夫を紹介します。研究に触れる部分では、その研究から分かることと、言い切れないことを区別しながら見ていきましょう。
この記事でわかること
- 物を少なくして暮らす人が大切にしている考え方の例
- 決断疲れや視覚的な刺激に関する研究と、その限界
- 育った環境や子どもの遊びと、持ち物の量を考える視点
- 家族の価値観を尊重しながら整理を進める工夫
部屋に物が少ない人の性格や心理は一つではない
物が少ない部屋を好む理由には、「掃除をしやすくしたい」「引っ越しに備えたい」「好きな物だけを置きたい」など、さまざまなものがあります。性格だけではなく、その時々の生活事情が関係している場合もあるでしょう。
ここでは、物を少なくして暮らす際の考え方をいくつか紹介します。すべての人に共通する特徴ではなく、自分の暮らしを考えるための参考として読んでみてください。
自分の基準で持ち物を選ぶ考え方
物を増やしすぎないために、自分の好みや必要性を確かめてから購入する人もいます。SNSで話題になっていたり、セールで安くなっていたりしても、一度立ち止まって考えるという方法です。
「今の暮らしで使うか」を確かめる
購入前には、「使う場面が具体的に思い浮かぶか」「似た物をすでに持っていないか」「収納や手入れに無理がないか」といった点を確認してみましょう。自分なりの基準があると、買うかどうかを考えやすくなる場合があります。
ただし、物が少ないからといって、承認欲求が低い、自己肯定感が高い、意志が強いと結論づけることはできません。物を集める楽しみや、おしゃれを通じた自己表現も、その人にとって大切な価値になり得ます。
物の量を人の価値と結びつけない
大切なのは、所有物の少なさを競うことではなく、自分が納得して選べているかどうかです。好きな物に囲まれた部屋を心地よく感じる人もいれば、余白の多い部屋で落ち着く人もいます。
すっきりした環境と、選ぶ手間の関係
目に入る物が少ない空間を、落ち着きやすい、作業に集中しやすいと感じる人もいます。ただし、快適な環境には個人差があり、物を減らすだけで疲労の軽減や集中力の向上が保証されるわけではありません。
決断疲れについて分かっていること
選択や判断を重ねることによる負担は、「決断疲れ」という言葉で説明されることがあります。Vohsらの研究では、商品などを選ぶ課題を行った後に、課題への粘り強さなどが低下する結果が報告されました。[1]
ただし、この研究は、部屋の物を減らす効果を直接調べたものではありません。また、研究で用いられた「限られた資源」という説明を、そのまま脳のエネルギーやワーキングメモリの消費量と読み替えることはできません。
日常生活では、服の組み合わせをあらかじめ決める、よく使う道具の置き場所を固定するなど、選択や探し物の手間を減らす工夫が考えられます。物の数だけに注目せず、自分が迷いやすい場面を見直してみましょう。
視覚的な刺激の研究を、暮らしに当てはめる際の注意
McMainsとKastnerの研究では、複数の視覚刺激を同時に提示した際の、視覚野における情報処理の競合などが調べられています。ただし、家庭の片付けによって慢性的な疲労が改善することや、物の少ない人ほど仕事ができることを直接示す研究ではありません。[2]
生活上の工夫としては、作業中に使わない物を机から移す、必要な物を取り出しやすくするなど、実際の使いやすさを確かめながら調整する方法があります。
| 環境の状態 | 日常生活で起こりうること | 見直すときの工夫 |
|---|---|---|
| 物の置き場所が定まっていない | 必要な物を探すのに時間がかかる場合がある | よく使う物から置き場所を決める |
| 作業場所に、使わない物が置かれている | 気が散ったり、作業スペースが足りなくなったりする場合がある | 作業に必要な物を中心に配置する |
| 必要な物が整理され、取り出しやすい | 探し物や片付けの手間を減らせる場合がある | 使った後も戻しやすい収納にする |
物の総量だけでなく、配置や収納方法、本人の好みによっても使いやすさは異なります。
探し物や管理の手間を減らす
持ち物の管理や探し物にかかる時間が減れば、その分を仕事や趣味、休息に使えることがあります。ただし、生まれる時間や気持ちの余裕は、生活状況によって異なります。
「物を減らせば生活全体がよくなる」と期待しすぎず、「朝の支度をしやすくする」「掃除前に物を動かす手間を減らす」など、具体的な目的を決めて取り組むと、変化を確かめやすいでしょう。
管理しやすい量を持つことで安心する人もいる
持ち物を把握できる状態にしておくと、安心すると感じる人もいます。そのために物を減らす場合もあれば、必要な備えをそろえることで安心する場合もあるでしょう。
こうした選択を、物の量だけから「完璧主義」「不安が強い」「防衛機制が働いている」と判断することはできません。本人がどのような目的でその暮らし方を選んでいるかに目を向けることが大切です。
手入れや保管の負担を考える
物の種類や量によっては、手入れや保管にかかる手間、費用が増えることがあります。服なら洗濯や衣替え、家電なら清掃や修理など、購入後の管理も必要になります。
購入前に「自分の生活の中で無理なく管理できるか」を考えることは、持ち物を見直す一つの基準になります。ただし、管理に手間がかかっても、それ以上の楽しみや便利さを感じる物まで手放す必要はありません。
物が多いことと、片付けが苦手なことを分けて考える
物が多くても、必要な物を把握して使いやすく収納している人はいます。一方で、物が少なくても、置き場所が決まっていなければ探し物に困ることがあるでしょう。
片付けにくさを考えるときは、物の量だけでなく、収納の使い勝手、使える時間、体調、家族との役割分担なども確認してみてください。
物を残す理由は人によって異なる
「もったいない」「また使うかもしれない」「思い出として残しておきたい」など、物を手放したくない理由はさまざまです。再購入の費用が気になる場合や、仕事や趣味で使うために保管している場合もあります。
こうした理由を一律に「執着」や「過度な不安」と捉える必要はありません。ほかの人には不要に見える物でも、本人にとっては大切な意味を持っていることがあります。
片付けの工程が負担になることも
片付けには、必要性を考える、収納場所を決める、処分方法を調べるといった複数の工程があります。疲れているときや、ほかの用事が重なっているときには、取りかかること自体を負担に感じる場合もあるでしょう。
また、「一度に完璧に片付けたい」と考えることが、始めにくさにつながる場合もあります。そんなときは、引き出し一つだけに範囲を絞る、今日は分類だけにするなど、作業を分ける方法を試してみてください。
片付けが進まないことだけで、性格や能力の問題と決めつける必要はありません。気分の落ち込みや不眠なども続き、日常生活に支障がある場合は、片付けだけで解決しようとせず、医療機関や相談窓口を利用することも選択肢です。
育った環境と、現在の暮らし方の関係
子どもの頃の住環境を振り返り、「同じような部屋にしたい」と考える人もいれば、「違う暮らし方を選びたい」と考える人もいます。ただし、同じような経験をしても、その受け止め方や持ち物への価値観は人によって異なります。
過去の経験から、暮らしを見直す場合もある
たとえば、実家で物の置き場所が分からず困った経験から、自分の家では収納場所を決めておきたいと思うこともあるでしょう。物が多く、くつろぐ場所が少なかった経験から、広い空間を好むようになる場合も考えられます。
ただし、こうした経験が必ず物の少ない暮らしにつながるわけではありません。現在の持ち物の量だけから、その人の家庭環境や過去のつらさを推測することは避けたいところです。
子どもの遊びと、物の量のバランス
子どもの遊びや学びを考える際は、物の量だけで判断せず、年齢や興味に合った遊びができるかにも目を向けたいところです。
Dauchらが幼児36人を対象に、おもちゃが4個の場合と16個の場合を比較した研究では、4個の条件で一つのおもちゃで遊ぶ時間が長くなり、遊び方も多様になりました。[3]
ただし、これは限られた条件での遊びを調べた結果です。長期的な発達への影響や、家庭で持つべきおもちゃの数を示すものではありません。「少なければ少ないほどよい」「多いと発達に悪い」と結論づけることはできません。
家庭では、遊べる場所を確保する、使っていないおもちゃを一時的に収納して入れ替えるなど、子どもの様子に合わせて調整してみましょう。整理された空間を保つことと、安心して遊べる場所や時間を設けることの両方を考えられるとよいですね。
図鑑や知育玩具など、特定の品物をそろえることだけにこだわる必要はありません。子どもの年齢や興味、家庭の状況に合わせて、遊びや探索の機会を考えていきましょう。
物の量を見直し、暮らしを整える習慣
ここからは、持ち物を管理しやすくする工夫や、家族と気持ちよく暮らすための考え方を紹介します。すべてを取り入れる必要はありません。今の生活で困っていることに合う方法を選んでみてください。
無理なく続けられる整理の工夫
片付け方を考える際は、物を減らすことだけでなく、購入、収納、使用後の片付けまでを見直してみましょう。「一つ買ったら一つ手放す」という方法もありますが、必要な物が増える時期には、そのルールにこだわらず調整してください。
判断に迷う物には「保留」を使う
まずは引き出し一つなど、小さな範囲から始めます。中身を確認し、「使っている物」「手放してよい物」「判断に迷う物」に分けてみるのも一つの方法です。
迷う物は、無理にその場で捨てると決める必要はありません。保留する場所を作り、次の季節や数か月後など、使う機会に合わせて見直す時期を決めておくと、取り組みやすくなる場合があります。
保留期間中に使わなかった場合も、季節用品や備えなどは別に考えましょう。使用頻度だけで判断せず、役割や再入手のしやすさも確認してください。
整理や買い物で試せること
| 場面 | 工夫の例 | 目的 |
|---|---|---|
| 床や机の上 | 使っていない物を収納し、作業や移動の場所を確保する | 掃除や日常の動作をしやすくする |
| 収納 | よく使う物の置き場所を決め、戻しやすい位置にする | 探し物や片付けの手間を減らす |
| 消耗品の在庫 | 使用量や買い足しやすさに合わせて、保管量を決める | 重複購入と不足の両方を避ける |
| 紙袋や包装材 | 用途に合わせて、残す量や保管場所を決める | 必要な物を確認しやすくする |
| 収納用品の購入 | 先に持ち物と置き場所を確認する | サイズや用途の合わない購入を減らす |
| 買い物 | 使用場面、手入れ、保管場所、処分方法を確認する | 購入後の負担も含めて検討する |
試してみて使いにくければ、方法を変えて構いません。整った見た目だけでなく、本人や家族が使いやすく、続けやすいかどうかを確かめましょう。
物だけでなく、経験を大切にする選択もある
持ち物を見直す中で、旅行や趣味、家族や友人と過ごす時間にお金を使いたいと考える人もいます。一方で、本や楽器、道具などの所有が、楽しみや交流につながる場合もあります。
経験への支出と幸福感に関する研究
Van BovenとGilovichの研究では、経験への支出について、物の購入よりも高い幸福感が報告されました。ただし、この結果だけで「経験を買えば、誰でも幸福感が長続きする」と言い切ることはできません。[4]
CaprarielloとReisの研究では、他者と共有するかどうかも重要であり、その違いを考慮すると、経験への支出が物の購入より優れるとは限らない結果が示されています。[5]
これらは支出と幸福感に関する研究であり、物が少ない人ほど性格がよい、人間関係が豊かであると示すものではありません。物か経験かという二択にせず、自分が満足できる使い方を考えてみましょう。
家族との違いを前提に、ルールを共有する
自分にとっては物の少ない部屋が快適でも、家族は好きな物を身近に置いておきたいかもしれません。同じ家に住んでいても、心地よいと感じる状態は人によって異なります。
片付けを進める前に、「何が困っているのか」「どの場所を使いやすくしたいのか」を具体的に話すと、相談の出発点を作りやすくなります。
共有スペースは話し合って決める
リビングやダイニングなどでは、使う人全員で置く物や片付け方を相談しましょう。「食事の前にはテーブルを空ける」「各自の物を入れるかごを用意する」など、具体的で無理のないルールから試す方法があります。
掃除や管理の担当も、きれい好きな人に自動的に任せるのではなく、使える時間や負担を考えて決めてください。
個人のスペースと持ち物を尊重する
個人の机や収納などは、できる範囲で本人の好みを尊重しましょう。一方で、通路をふさいでいる、食品ごみが残っているなど、家族の生活や衛生・安全に関わる点は、個人の好みと分けて相談する必要があります。
子どもの持ち物についても、年齢に合わせて一緒に整理し、何を残したいかを聞いてみてください。成長に合わせて本人が決められる範囲を広げ、困っている部分には手助けをする方法が考えられます。
捨てることを強要しない、柔軟な片付け方
自分に合った片付け方でも、家族にそのまま合うとは限りません。相手が大切にしている物を、自分の基準だけで不要と判断しないようにしましょう。
本人の同意なしに処分したり、繰り返し捨てるよう迫ったりすると、相手を傷つけ、信頼関係を損なうおそれがあります。家族の持ち物を処分する際は、本人の意思を確認してください。
処分以外の解決方法も考える
共有スペースに物が多くて困っている場合も、解決方法は処分だけではありません。置き場所を変える、収納の範囲を決める、飾る物を入れ替えるなどの方法もあります。
「なぜ捨てないの?」と責めるより、「ここを使えるようにしたい」「この範囲に収める方法を一緒に考えたい」と、困りごとや希望を伝えてみましょう。
物の少なさを優先するのではなく、必要な物や楽しみを残しながら、家族が納得できる状態を探していくことが大切です。
自分にとって心地よい物の量を見つける
物が少ない人にも、多い人にも、さまざまな性格や生活背景があります。持ち物の量だけで、自立心や自己管理能力、心の健康を判断することはできません。
暮らしを見直したいときは、「どれだけ捨てるか」よりも、「何に困っていて、どう変えたいか」を考えてみてください。探し物を減らしたい、掃除をしやすくしたい、趣味の場所を作りたいなど、目的によって必要な工夫は変わります。
小さく試し、使いやすさを確かめる
無理に物を減らすと、後悔したり、買い直しが必要になったりすることがあります。まずは机の引き出し一つなど、小さな範囲から取り組んでみましょう。
「今の生活で使っているか」「大切に残したいか」「取り出しやすい場所にあるか」を確かめ、必要に応じて配置や保管方法を変えてみてください。判断に迷う物は、いったん保留しても構いません。
自分に合った整理の仕方を見つけることが、生活のしやすさや気持ちの余裕につながる場合もあります。物の少なさそのものを目標にせず、自分と家族が心地よく暮らせる状態を探していきましょう。
参考文献
- Vohs, K. D., et al.(2008). Making choices impairs subsequent self-control: a limited-resource account of decision making, self-regulation, and active initiative. Journal of Personality and Social Psychology, 94(5), 883–898.
- McMains, S., & Kastner, S.(2011). Interactions of top-down and bottom-up mechanisms in human visual cortex. Journal of Neuroscience, 31(2), 587–597.
- Dauch, C., Imwalle, M., Ocasio, B., & Metz, A. E.(2018). The influence of the number of toys in the environment on toddlers’ play. Infant Behavior and Development, 50, 78–87.
- Van Boven, L., & Gilovich, T.(2003). To do or to have? That is the question. Journal of Personality and Social Psychology, 85(6), 1193–1202.
- Caprariello, P. A., & Reis, H. T.(2013). To do, to have, or to share? Valuing experiences over material possessions depends on the involvement of others. Journal of Personality and Social Psychology, 104(2), 199–215.